製茶工程についてーはじめに

ホームページを作成する際、個人的には製茶(お茶の製造工程)には触れなくても良いのかな?と考えていました。色々な製茶工場のホームページを見ましたが、どこも似たような内容で製茶を行っている立場としては面白みの無いページだったからです。
しかし、とある消費者の方から「どのような工程でお茶が出来るのか興味がある」とのご意見を頂き、作成することにしました。
ただ、機械の写真を並べて「これが蒸す機械です」みたいな感じでは説明し甲斐が無いので、長野園の機械設定も含めて、消費者の方にはかなりマニアックな内容にしています。 本当に興味のある方だけごらん下さい(笑)

 

現在、長野園の製茶機械は最新式とは言えないものの、温度センサー、含水率センサーなどを組み込んだ機械制御のシステムになっています。
ここに書かれている内容も、機械製茶の理論が中心です。
ですが、製茶性能がいくら向上して最新の機械一式が導入されている工場でも、機械の微調整は茶師の経験と感覚に頼る部分が多くあります。
同じ原料で同じ機械を使って製茶しても同じお茶は出来ません。
そこがお茶作りの魅力の一つかなと感じています。

茶葉の収穫

一昔前は2人で畝の両側に立ち、歩きながら収穫を行っていましたが、現在では乗用型の収穫をする機械でお茶摘みを行っています。
一定の高さで収穫が出来、1人で作業が出来、ペースも速いので非常に便利な機械です。
しかしながら、いつのタイミングで、どの高さで収穫するかの判断は人間の勘と経験になります。
この部分は収穫量と品質のバランスに直結するので、とても大切な部分です。
長野園では、「ちょっとまだ早いかな?」というタイミングで収穫を行います。
当然、収穫量は少なくなりますが、品質の高いお茶が出来ます。
どうしてか。 お茶の新芽は日に日に大きくなりますが、それはイコール葉の厚みも日に日に増してゆくと言うこと。 葉の厚みが増すと、当然茶葉が硬くなりお茶の形状も悪くなりますし、新芽のすがすがしい香りも弱くなっていってしまうのです。
「お茶の8割(人によっては9割)は茶葉の品質で決まる」と言われます。
それまでの1年間の茶園管理を無駄にしないためにも最高の状態で収穫しなくてはいけませんよね。

 

収穫した茶葉の保管

茶葉は収穫した直後から傷み始めます。
その傷みを最小限に抑えることが、品質の高いお茶をつくるのに非常に大切なプロセスです。
私が気を使っているのは以下の点です。
 ①収穫した茶葉を日光(紫外線)にさらさないように

  トラックに通気性の良い覆いをして日陰で保管する

 ②茶葉をコンテナに積み込むときにはしっかりとほぐす
 ③できるだけ素早く製茶工程を開始する

 

「今のお茶は昔のお茶に比べて香りがしなくなった」とおっしゃる方もいらっしゃいます。
昔のお茶は、収穫にも時間がかかりましたし、製造も大量に出来なかったので茶葉が傷んだ(変質した)状態でした。

今では機械と技術の向上で格段に新鮮な状態で製茶を行うことが出来るようになったのです。
しかしながら、この変質が特定の条件のもとでは化学反応で良い香りの成分となり、香り(萎凋香=いちょうか)のあるお茶ができるのも事実です。
この萎凋を極めたのが中国のウーロン茶に代表される半発酵茶です。
現在、この萎凋を見直す動きも出てきていますので、

今後勉強してゆかなければいけませんね。

 

蒸す

蒸す工程は「製茶の8割は蒸しで決まる」と言われるほど大事な部分です。
蒸しで失敗すると本当にその後の工程では取り返しがつきません。
異常に渋かったり(蒸し不足)、赤い水色(真っ赤という意味ではなく、黄土色っぽい濁った状態を示す)にならないように細心の注意を払い、常に蒸し機から出てくる蒸気の香りと蒸した茶葉の状態を手触りと目で確認します。
蒸し機の設定はこんなにあります
 ①ボイラーの圧力・蒸気量・水位
 ②茶葉の蒸し機への投入量
 ③蒸し機の角度、胴の回転数、軸の回転数

長野園では、青みがかった目で見て直感的に「おいしそう!」と思えるようなお茶を目指していますので、この工程は本当に真剣に微調整をしています。
10分以上この蒸し機からあがる蒸気の香りを嗅ぎ続けたり、出てきた茶葉を熱湯でいれて設定に問題が無いか確認しているんですよ。

 

冷やす

蒸した直後の茶葉は90℃以上の高温です。
そのままの温度では、茶葉がムレてあっという間に品質が落ちてしまいますので、即座に冷やす機械を通します。 この工程では、蒸した茶葉についている水分を蒸発させ、気化熱を奪って冷却をします。 
深蒸し茶の場合は水分が多いので70℃~80℃の温風で冷却(不思議な表現ですが)します。
この工程で水分が8%~12%減ります。

 

ざっくり揉みながら乾かす

この工程だけで3台の機械を使い、50分~60分かかります。
円筒状の機械の内部は"葉ざらい"と呼ばれる茶葉をすくう部分と、"揉手"と呼ばれる茶葉をよりこむものがついています。
この3台の機械の設定は
 ①温風温度
 ②風量
 ③主軸の回転数
 ④1台毎の時間
 ⑤茶温
 ⑥茶葉の投入量
1台目の機械では風量を多くして素早く水分を減らし、残り2台では風量を絞って徐々に乾燥させて充分によりこみます。この工程で気をつけなくてはいけないのが、上乾き(風量が多すぎると茶葉の表面だけが乾いてしまい、内部の水分が後工程で出にくくなる)をさせない事と、茶温が上がり過ぎないようにする(茶温が上がり過ぎると赤っぽくなってしまう)です。 茶温はセンサーがついているのですが、やはり確認は人の手で行います。

 

練る

この工程は、お茶の製造工程で唯一熱を加えない工程です。
上から重みをかけて茶葉を練る事で、茶葉の内部にある水分を表面に戻し、後の工程で均一に乾くようにします。
以前はさほど重要視されていなかった工程ですが、現在はしっとりとした肌触りの緑茶(水分量がばらばらの状態で揉んだお茶は、肌触りがざらつく)をつくるために近年重視されている工程です。
この工程で茶葉の状態をしっかり確認すると、前の工程の良し悪しが判断できます。
設定は時間と重さだけです。

 

 

揉みながら乾かす

この工程では2台、同じ機械を使っています。
この機械に葉ざらいはなく、揉手だけがあります。
揉み手で茶葉を揉み込み、茶葉内部の水分を表面に揉み出し、熱風で乾かします。
これまでの工程で茶葉の水分量が多すぎると、この工程で一気に乾かすことになりお茶の色が赤くなってしまいます。 
この機械の設定は
 ①熱風温度
 ②熱風量
 ③回転数
 ④取り出し水分量
となりますが、熱風温度以外はさほど頻繁には設定変更は行いません。 調整は基本的に前工程の設定変更で対応します。

 

茶葉の形を作る

この工程は、思わず見とれてしまいます。
それまでよれよれだった茶葉が40分~60分この機械でより込まれていくうち徐々に形が出来てゆくのです。

設定は非常に細かく
①釜の温度
②茶葉の投入量
③分単位での加重量
④トータル時間
です。

これも、茶葉の湿り具合で加重の時間と重さを適切に変えないと黒ずんだ茶葉になってしまったり、
長い時間より込みすぎると茶葉が白っぽくなってしまったりするので、人の手と目で確認をしながら微調整をする必要があります。

 

乾かす

おつかれさまでした。乾燥機です。
この工程で最終的に茶葉の水分量を5%まで減らします。
この工程まで終了したお茶が業界用語で"荒茶(あらちゃ)"と呼ばれます。
静岡など他産地では、茶農家はこの荒茶を製茶問屋に持ち込み販売します。
あとは製茶問屋が仕上げ(ブレンドし、形を揃えて焙煎する)を行い、消費地問屋や販売店に卸します。
長野園もそうですが、さしま茶の茶農家はこの製茶問屋の仕事もこなし、お客様に直接販売をするところまでが仕事です。
これは全国的にも非常に珍しい点で、それぞれの茶農家が工夫を凝らしていますので"さしま茶"とひとくちに言ってもそれぞれのお茶はとても個性的なんですよ。
ワインの世界ではプライベート・ワイナリー(小規模で特別なワインを造る醸造所)と言う言葉がありますが、私たちさしま茶の生産農家はさしずめプライベート・茶イナリーですね。

 

長らくお付き合いいただきありがとうございました。

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